全カリ 第14回

〈今までのまとめ〉
今回は、『大学と現代社会』という講義の最終回でした。最終回ということで、これまでの授業で言い残したことや、補足なども含めて、まとめてくださいました。
立花隆は、立教大学の全カリで何を伝えたかったのでしょうか・・・。
 

教養教育とは、この世を構成するあらゆるモノについて、何がどうなっているのか、を教えることです。ここでポイントとなるのが、“深さ”です。全てのモノを、広く深く学ぶことは、時間的にも能力的にも不可能です。ですから、限られた時間のなかで、いかに幅広く、たくさんのモノを学ぶことができるかが、鍵になります。
つまり、「自分で学習する能力」=自己学習能力を身につけなければいけません。これから私たちが社会に出ると、自己学習能力が必要となることがたくさんあります。というより、そればかりです。この自己学習能力を高める“技”のうち、最も有益なのが、「読書」です。最初は入門書から始めて、どんどんレベルをあげていきます。読書において、一番大切なことは、「一定の時間にどれだけ読めるか」です。つまり、速読術を身につけなければいけないのです。
 『瞬間情報処理の心理学~人が二秒間でできること~』  海保博之 編著
この本によると、人間というのは、“最初の1,2秒”で心を決めています。買い物で何を買うかという時や、第一印象の形成などが良い例です。ですから、最初の1,2秒がものすごく大切なのです。
読書でもこれは応用できます。逐次読み(1字1字読むこと)や逐語読み(単語単語で読むこと)ではなく、「とばし読み(スキミング)」ができるかで、その人の能力は決まります。スキミングができれば、たくさんの本を短時間で読むことができるため、たくさんの情報を手に入れることができるからです。自己学習能力を身につけるためには、スキミングができるのとできないのとでは、雲泥の差があるのです

~スキミングの方法~
   第一、二段落(=オープニングパラグラフ)は全部読む。
   第三段落以降は最初の一文だけ読む。
   最後とその一つ手前の段落は全部読む。
 

これができるだけで、読書能力は数倍になる、と立花先生は断言しました!
 そして、書く側にも同じことが言えます。モノを書くときには、“最初としめ”が大切なのです。
 

〈論理的思考〉
 大学生である私たちの大部分は、就職活動をして、サラリーマンになります。世界の超一流企業では、こんなユニークな試験が行われているところもあるのです。そこでは問題解決能力が問われていることを実感させられます。
 

『ビル・ゲイツの面接試験』   ウィリアム・パウンドストーン著
 この本では、マイクロソフト社の面接試験で出された問題が紹介されています。
(例)「富士山をどう動かすか?」
「なぜマンホールのふたは丸いのか?」
「どうやってM&Mチョコレートを作るか?」
「アイスホッケーリンクの総重量は?」
「世界中のピアノ調律師の数は?」
 

マイクロソフト社は、これらの“解けない”問題をどう対処するかを見て、その人の問題解決能力を探るそうです。単なる教養ではなく、ポテンシャルな能力をみるのです。このような試験はマイクロソフトだけが行っているわけではありません。グーグルなどでも、このような試験が行われています。
 では、これらの問題を解く力はどうやったら身につくのでしょうか?先生は、そう簡単には身につかないと言います。論理学を取れば身につくわけではないのです。
問題解決能力は、知識を詰めていけば、自然に身につくものだそうです。多方面から、何度も繰り返していくうちに、自然と身につくものです。
 

ですから、読書、それも、限られた時間の中で、幅広くたくさん読むことがとても大切なのです。
 

〈 癌 ~がん~ 〉
先生はこの年末年始、膀胱がんで手術&入院されました。突然のカミングアウトで教室もざわめきました。「癌って言うけど、先生すごく元気そう・・・。」
ご自身の体験も交えて、癌とは何なのか、を私たちに伝えて下さいました。
 癌とは、現代の日本で一番知っていなければいけない知識の一つです。本来、あらゆる人が癌について知らなければいけないのです。なぜなら、癌は死因のトップであり、死因の3割を占めるため、ちょっと周囲をみれば、癌の人がいる、という世の中だからです。
そして、驚くことに、私たちの体の中にも、ガン細胞の若いものがどこかにいるのです。癌とは、遠い病気ではなく、身近な病気なのです。
 

『ムーア人体発生学』
 この本によると、細胞というのは、バイバイゲームで大きくなります。バイバイゲームというのは、1×2=2、2×2=4、4×2=8、8×2=16、16×2=32、32×2=64・・・・・というように、答えをどんどん“倍”にしていく(倍=ダブリング)、ということです。
人間の細胞は、全部で約60兆個あるそうですが、これは、バイバイゲームを30回から40回行ってできたものです。
がん細胞もこのダブリングによって成長していきます。最初は1個だったがん細胞も、ダブリングを重ね、どんどん大きくなっていきます。そして、癌細胞というのは健康な細胞ではありませんから、大きくなればなるほど体に悪影響を及ぼします。
癌細胞は、簡単に見つけられるものではありません。初期段階では大変小さいため、今の医学では、どんなにラッキーでも2gからしか見つかりません。普通は10gくらいで発見できるとされています。そして、癌細胞が1kg(直径16cm)まで大きくなると、ほぼ死ぬと言われています。
しかし、どんどん大きくなっていく、がん細胞の成長のスピードは常に等しいわけではありません。1gになってから、ものすごく速いスピードで増えていきます。ダブリングのスピードを薬で遅らせますが、がん細胞が大きくなってしまうと、その薬も効かなくなってしまいます。ですから、早期発見が大切なのです。早い時期に発見し、オペで取ってしまえば、癌は決して怖い病気ではないのです。
 

幸い先生も、早期発見だったようで、目に見えるがん細胞は全て取ったとのことです。しかし、あと2,3年は癌細胞が復活する恐れもあるようなので、油断大敵です!
 

そして、話は尿についても及びました。(先生は膀胱がんだったため)
尿は1日1ℓ出ます。そして、体の60%が水分です。毒素はほとんどが血液の中にあり、尿はそれを体外に出すのです。
肝臓のなかの糸球体がフィルターのようになっていて、毒素を体の外に出します。1日当たり180ℓの水分が糸球体でろ過されています。しかし、尿は1日あたり1ℓしか出ません。糸球体は毒素を凝縮し、ろ過しているのです。この糸球体、つまり肝臓というのはものすごい機能を持っていることがわかるでしょう。
 先生はこのような知識を、ほとんどの場合、本から得ると言います。しかし、全部をくまなく読むわけではありません。まず、目次を読みます。これで欲しい知識がどこに書いてあるのか、一目でわかります。または、索引から調べることもあります。しっかりした本というのは、言い換えれば、「索引がしっかりしている本」とも言えるのです。
しっかりした本を見つけ、それを速読し、短時間で正しい情報をたくさん得ることが大切なのです。
 

〈脳〉
この授業では、脳について、色々な角度から少しずつやってきました。
 

いまや、「サイボーグ」の時代です。
 例えば、腕がなくなった人のロボットアーム、これは脳から人間の体を動かす信号が出ていることを利用したものです。そして、今日本の一大産業になろうとしているのが「HAL」というロボットスーツです。
 これは、アシモのようなロボットではなく、人間の力を補助するものです。HALは人間の10倍の筋力を持ちます。これによって、身体障害者がアルプスを登ることができるようになるかもしれません。
 また、考えるだけで、自分の手足は全く使わないのに、ロボットの手が動くことで、たくさんの操作ができるという技術も開発されています。マシュー・ネイゲルさん(25歳)は、首をナイフで切られ、頚椎を損傷し、下半身が全く動きません。普通だったら寝たきりになるところですが、この技術のお陰で、考えるだけで、手を使わなくても、インターネットを利用することができたり、考えるだけで車椅子を動かすことができたりします。
 

 今の時代は、世の中のモノのほとんどはコンピューターで動いています。ですから、考えるだけで、あらゆるモノを動かすことができます。イラク戦争で、飛行機を飛ばし、爆弾を落とすことも可能なのです。
 世の中に溢れる最先端技術は、happyなモノだけではありません。良いところもありますが、危険なこともたくさんあります。
 社会に出たら、こういう影響がどんどん出てきます。それに合わせて、“社会的決定”をしなくてはいけません。むしろ、できなくてはいけません。危険なものを事前に把握したり、規制をしたり、禁止したりしなくてはいけません。人々を説得しなければいけません。
  そのためには教養を身につけなければいけません。そして、今の日本の大学の教養では足りないのが現状です。しかし、世の中には、本やインターネットなどがあり、情報が溢れています。これをいかに収集し、自分で身につけていくかがこれからの課題なのです。
 

 先生は半年間、その大切さと方法を私たちに伝えて下さいました。
 

〈感想〉              
半年という短い時間でしたが、本当に濃い授業でした。複数回に及ぶレポート提出、生徒によるプレゼンテーション、広範囲に及ぶ大量の本の紹介、文章の書き方、最先端科学技術、などなど数えればきりがありません。毎回の授業は驚きの連続で、この授業を聞けるなんて私幸せだなぁと思います。立花隆というすごい人間を、少しだけのぞくことができて、本当に面白かったです。
そして先生の授業で特に感動したことは、全然関係ない話をしていると思ったら、意外なところでつながっている!と気付かされるところです。立教大学の話から尿の話まで、とても広範囲に及んでいるのですが、最後は“教養”にたどり着いている、というところが本当にすごいと思います。色んな本を読み、色んなことに興味を持ち続けている立花先生にしかできない授業に参加させていただけて、本当に嬉しく思います。
先生、半年間本当にありがとうございました。先生の求める“教養人”になるべく、努力したいと思います。
そして、お体を大切に☆